こんにちは。年末が近づくとスーパーや百貨店にずらりと並ぶ「おせち料理」。カラフルで華やかなお重箱を前にすると、「お正月だなぁ」と実感する方も多いのではないでしょうか。
でも、なぜおせちを食べるのか? どんな由来があり、それぞれの料理に込められた意味は何なのか?そして最近は「令和のおせち」として、昔ながらとはちょっと違う進化系おせちも注目されています。
今回は おせち料理の歴史から最新トレンドまでたっぷりご紹介します。

目次
◆おせち料理の由来とは?
「おせち」の正式名称は「御節供(おせちく)」です。もともとは五節句(1月7日・3月3日・5月5日・7月7日・9月9日)など、節目の日に神様へ供えられた料理のことを指していました。それが次第に「正月の節句」が特に重要視されるようになり、
新年を祝う料理=おせち料理として定着したのです。昔の人々にとって正月は「年神様(としがみさま)」をお迎えする神聖な行事でした。年神様はその年の豊作や家族の健康をもたらしてくれる存在。その神様にお供えし、同じ料理を家族でいただくことで、
福を分かち合う意味があったのですね。
◆おせち料理の「基本的な品数」と「奇数の意味」
昔ながらのおせちは「五段重」でした。1段ごとにテーマが決まっていて、次のように詰められます。
- 一の重:祝い肴(数の子、黒豆、田作りなど)
- 二の重:口取り(伊達巻、紅白かまぼこなど)
- 三の重:焼き物(鯛やぶりの焼き物)
- 四の重:煮物(筑前煮など)
- 五の重:控えの重(空っぽにして吉を呼び込む)
現代では三段重や二段重が主流ですが、実はおせちの「品数」や「段数」には縁起を担ぐ意味も込められています。
◆奇数が好まれる理由
日本の伝統文化では「奇数=陽の数、縁起の良い数」とされています。一方、偶数は「割り切れる」ため「縁が切れる」につながり、あまりお祝い事には用いられません。
例えば、七草がゆは「7種類」、正月飾りの門松も「3本」、五節句もすべて奇数の日付 (1月1日、3月3日、5月5日など)。こうした考え方が「おせちの品数」にも受け継がれています。
*祝い肴三種:特に有名なのが「祝い肴三種」。地域によって違いはありますが、基本はこの3品。三種で奇数、縁起良くまとまっています。
・黒豆 … 「まめ」に働けるように、健康と長寿を願う。
・数の子 … 子孫繁栄。ニシンの卵は多産を意味。
・田作り … 豊作祈願。小魚の佃煮は田んぼの肥料にちなむ。
◆おせち料理それぞれの意味
では、他の定番料理の意味も見てみましょう。
* 口取り
・伊達巻 … 卵と魚のすり身を巻いた甘い料理。巻物に似ており、学問成就を願う。
・紅白かまぼこ … 赤は魔除け、白は清浄を表し、お祝いの紅白カラー。
*焼き物
・鯛 … 「めでたい」にかけた縁起物。
・ぶり … 出世魚であり、立身出世を願う。
*煮物
・れんこん … 穴があいている → 将来の見通しが良い。
・里芋 … 子芋がたくさん → 子宝・子孫繁栄。
・ごぼう … 根を深く張る → 家の安泰。
*その他の縁起物
・栗きんとん … 黄金の財宝を表し、金運上昇。
・昆布巻き … 「よろこぶ」の語呂合わせ。
料理を選ぶとき、3品・5品・7品と奇数で揃えるのが縁起良いとされてきました。実際に煮物も「五目煮」「七目煮」と呼ばれることが多いのは、この考え方の影響です。
◆地方独特のおせち料理
実はおせち料理は「全国共通」ではなく、地域ごとに少しずつ特色があるんです。ここでは、地方独特のおせちの具材や料理を具体的にご紹介します。
[北海道・東北地方]
・鮭の昆布巻き:北海道ではニシンより鮭を使うことが多い。
・いくら醤油漬け:海の幸が豊富な北海道らしい豪華な一品。
・棒鱈煮(ぼうだらに):東北で定番。干した鱈を戻して煮る料理で保存性も高い。
[関東地方]
・伊達巻:江戸時代から関東を中心に広まった甘い卵料理。
・小肌酢締め:江戸前寿司文化の影響で魚の酢締めが登場することも。
[関西地方]
・くわい:大きな芽が出る → 「芽出たい」に通じる。京都や大阪でよく使われる。
・棒鱈の甘煮:関西でもよく食べられ、「不屈の精神」を表す。
・にしん昆布巻き:関西では「鰊(にしん)」を使うことが多い。
[北陸地方]
・かぶら寿司(金沢):かぶにブリをはさみ、麹で発酵させた伝統料理。冬の保存食でもあり、お正月のごちそう。
・車麩の煮物:新潟では煮しめに使われることが多い。
[中国地方]
・鰆(さわら)の西京焼き:岡山や広島など瀬戸内地方で好まれる。春を告げる魚「鰆」は縁起が良い。
・あなごの煮付け:広島を中心に、海の幸として定番。
[四国地方]
・えびす(伊達巻の代わり):愛媛では魚のすり身を揚げた「えびす」がよく登場。
・金時豆:四国では黒豆の代わりに、赤い金時豆を甘く煮る習慣もある。
[九州地方]
・がめ煮(筑前煮):福岡を中心に定番。鶏肉と根菜をたっぷり使った煮物。こちらも入れる食材の数は「奇数 ※鶏もも肉・こんにゃく・(干し)椎茸・人参・れんこん・たけのこ・里芋・ごぼう・絹さや 等」です。
・かつお菜(福岡):「勝つ」に通じる縁起物の葉物野菜。雑煮にも入れられる。
・鰤の照り焼き(鹿児島・長崎):鰤は出世魚として九州でも人気。
[沖 縄]
※沖縄には本州のようなおせち文化はあまり強くありませんが、代わりにお正月料理として紹介します。
・ラフテー(豚の角煮)
・かまぼこの天ぷら
・中味汁(豚モツの汁物)
などが食卓に並びます。それぞれの地域の風土や食文化が色濃く反映されていて、とても面白いですよね。
◆令和のおせち事情
昔ながらのおせちも魅力的ですが、令和の今はライフスタイルに合わせてどんどん進化しています。
●一人用・小分けおせち:核家族や単身世帯向けに、一人分の「一段おせち」が人気。食べきりサイズで無駄がありません。
●洋風・中華風おせち:ローストビーフやエビチリが加わった「和洋中折衷」タイプ。子どもや若い世代でも楽しめます。
●冷凍&通販おせち:全国の名店のおせちが冷凍で取り寄せられる時代。地方に住んでいても簡単に豪華なおせちが味わえます。
●ふるさと納税を利用する:通販のように、自分が応援したい地方自治体に寄付をすると、返礼品として特産品をもらえる制度を使って「おせち」を注文する場合も増えております。注文は11月〜12月上旬までが目安です。
●健康志向のおせち:減塩・低糖質・アレルギー対応など、体に優しいおせちも増加中。家族みんなで安心して食べられる工夫がされています。
●ホテル・料亭監修おせち:有名ブランド監修のおせちはお正月の贅沢として人気。高級感と華やかさが魅力です。
◆令和のおせちに登場する具体的な料理とは
「令和のおせち」と言うと、ただ“現代風”というだけでなく、実際にどんな料理が入っているのか気になりますよね。
伝統を残しつつ、新しい味やライフスタイルに合わせた具体的な料理例をいくつかご紹介します。
●洋風アレンジおせち
・ローストビーフ:お正月のごちそうとして人気。和風ソースやわさびクリームでアレンジ。
・スモークサーモンのマリネ:紅白カラーでお祝い感もあり、洋風おせちの定番に。
・チーズ入り伊達巻:子どもも食べやすい甘さ控えめの進化形。
・ラタトゥイユ:煮物の代わりに彩り豊かでヘルシー。
●中華風アレンジおせち
・エビチリ:大ぶりの海老を使い豪華に。
・春巻き:切り口が華やかで、取り分けやすい。
・チャーシュー:紅白かまぼこの代わりに入れる家庭も。
・中華クラゲの酢の物:箸休めにぴったり。
●健康志向・ヘルシーおせち
・雑穀入り黒豆:栄養価を高めた新バージョン。
・こんにゃく田作り風:カロリーを抑えても縁起を残す。
・減塩昆布巻き:塩分控えめで高齢者にも安心。
・豆腐テリーヌ:洋風でも消化にやさしい。
●スイーツ系おせち(デザート重)
・抹茶ムース:和の雰囲気を残しつつおしゃれ。
・黒豆タルト:伝統の黒豆をスイーツに変身。
・栗きんとんモンブラン:栗きんとんをケーキ仕立てに。
・紅白マカロン:見た目も華やかで写真映え抜群。
●個食スタイルのおせち
・一段一人用おせち:焼き物・煮物・祝い肴を少量ずつ。
・オードブル風おせち:オリーブや生ハムを加え、お酒に合う仕様に。
つまり、令和のおせちは「伝統」と「多様性」の融合なんです。「黒豆の隣にローストビーフ」「栗きんとんの隣にモンブラン」というように、豪華で楽しい“福袋”のような存在になっています。
◆まとめ
おせち料理は「一品一品に願いが込められた「縁起料理」」です。そして奇数を大切にすることで「縁起の良さ」がさらに引き立ちます。
「黒豆で健康」「数の子で子孫繁栄」「鯛でめでたい」「煮物は奇数種類で縁起良く」昔の人の知恵と祈りがぎゅっと詰まったおせちは、新しい年を迎える特別な料理。令和の今は、一人用や洋風などスタイルは変わっても、「福を分かち合う心」は変わりません。
今年のお正月は、伝統と新しさを取り入れながら、自分らしいおせちを囲んでみてはいかがでしょうか?