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マイクロプラスチックとは?──海から空気、そして私たちの体へ忍び寄る小さな脅威

こんにちは。今日は環境問題の中でも、いま世界中で最も注目を集めている「マイクロプラスチック」についてお話ししたいと思います。
名前だけは知っているけれど、実際にどれほど深刻なのか、実感のない人も多いかもしれません。
でも最近の研究では、私たちの体の中 ── 血液や胎盤、さらには肺からも検出されたという衝撃的な報告が出ています。
つまり、マイクロプラスチックはもはや「環境問題」だけでなく、「人体問題」でもあるのです。

マイクロプラスチック

◆マイクロプラスチックとは?

マイクロプラスチック(Microplastic)とは、直径5ミリ以下の微小なプラスチック片のこと。大きく分けると次の2種類があります。

● 一次マイクロプラスチック:最初から小さい形で製造されたもの。

たとえば化粧品や洗顔料に入っているスクラブ粒子、工業用のペレットなどが該当します。

● 二次マイクロプラスチック:大きなプラスチック製品が、紫外線や波などで劣化し、砕けて小さくなったもの。

ペットボトル、ビニール袋、衣類の繊維などが海や河川で分解されてできるタイプです。
私たちが日常的に使っているプラスチック製品が、長い時間をかけて「粉々」になり、見えないレベルの粒子として地球上に広がっているのです。

◆世界の海に漂う「見えないごみ」

国連環境計画(UNEP)の報告では、年間約800万トンものプラスチックごみが海へ流れ込んでいるとされています。海に流れ出たプラスチックは、波や紫外線によって細かく砕け、やがてマイクロプラスチックになります。
問題は、プラスチックが自然に分解されないこと。微生物によって完全に分解されるまでには数百年かかるとも言われています。そのため、海洋中のマイクロプラスチックは年々増え続け、世界中の海岸、北極の氷、さらには深海からも発見されています。

◆生き物たちへの影響

マイクロプラスチックの厄介な点は、食物連鎖に入り込むことです。
「プランクトンがマイクロプラスチックを食べる」 → 「小魚がそのプランクトンを食べる」 → 「さらに大きな魚や鳥、人間がその魚を食べる」
こうして、私たちの食卓にもマイクロプラスチックが戻ってきます。海産物だけでなく、海塩や水道水、さらにはビールや蜂蜜からも微量のマイクロプラスチックが検出されています。つまり私たちは、気づかないうちに日常的に摂取しているのです。

◆肺からも検出された!マイクロプラスチック

ここ数年、さらにショッキングな研究が報告されています。それは、人間の肺の組織からもマイクロプラスチックが見つかったという事実です。
2022年、イギリスのハル・ヨーク医科大学の研究チームが、手術で採取された人間の肺組織を分析したところ、11人中13種類のマイクロプラスチックが検出されました。
中でも多かったのは、衣類などに使われる「ポリエチレンテレフタレート(PET)」や「レジ袋などのポリエチレン」など。
この結果は、私たちが呼吸を通してマイクロプラスチックを吸い込んでいる可能性を示しています。さらに最近では、オランダの研究で血液中からもマイクロプラスチックが検出されたという報告もあり、もはや「外の世界」だけでなく、
体の内側にまで入り込んでいることが分かってきました。

◆体への影響は?

では、吸い込んだり食べたりしたマイクロプラスチックは、私たちの体にどんな影響を与えるのでしょうか?
現時点ではまだ明確な結論は出ていませんが、研究者たちは次のような懸念を示しています。


● 炎症の原因となる可能性:肺に微小な異物が入り込むことで、慢性的な炎症や組織の損傷を引き起こすリスクがあるとされています。


● 化学物質の影響:プラスチックには製造時に添加される化学物質(BPAやフタル酸エステルなど)が含まれています。これらはホルモンバランスを乱す「環境ホルモン」として知られ、発育や生殖への影響が懸念されています。


● 毒素の吸着:マイクロプラスチックは周囲の有害物質(PCB、農薬など)を吸着しやすい性質を持つため、それらを体内に取り込むリスクもあります。
今後さらに研究が進むことで、人体への長期的な影響が明らかになっていくでしょう。ただし、確実に言えるのは「私たちはもうマイクロプラスチックから逃れられない」ということです。

◆空気中にも漂うプラスチック

海だけでなく、陸や空気中にもマイクロプラスチックは存在します。特に、合成繊維の衣類(ポリエステルやナイロンなど)が洗濯や着用の際に放出する「マイクロファイバー(極細繊維)」が深刻です。
これらの繊維は軽く、風に乗って大気中に舞い上がります。最近の研究では、都市の空気中からもマイクロプラスチックが検出されており、私たちは毎日、知らず知らずのうちにそれを吸い込んでいるのです。

◆世界で進む対策

国際的にもマイクロプラスチック対策は進みつつあります。
● EUでは、マイクロビーズを含む化粧品の販売が禁止。
● 日本では、2018年から業界によるマイクロビーズ使用の自粛が始まりました。
● 国連も「プラスチック汚染をなくす国際条約(グローバル・プラスチック条約)」の策定を進めています。
ただし、すでに環境中に拡散したマイクロプラスチックを完全に取り除くことはほぼ不可能。そのため、今後の課題は「発生を減らす」「出さない」ことに重点が置かれています。

◆私たちができること

マイクロプラスチックの問題は確かに大きいですが、私たち一人ひとりにも、できることはたくさんあります。
● 使い捨てプラスチックを減らす:マイボトルやエコバッグを活用しましょう。
● 天然素材の服を選ぶ:洗濯でのマイクロファイバー発生を減らせます。
● 簡易包装を選ぶ・リサイクルを意識する:過剰包装を避け、再利用できる素材を選ぶことが大切です。
● 知識を広める:友人や家族と話題にするだけでも意識が変わります。

◆小さな粒が問いかける、私たちの未来

マイクロプラスチックは、目に見えないほど小さな粒です。けれど、それは私たちの便利さの裏側で積み重なった「現代社会のひずみ」を象徴しているとも言えます。
私たちはこれまで、「使い捨て」を当たり前として生きてきました。しかし、そのツケが今、海にも、空にも、そして私たち自身の肺の中にまで届いています。
マイクロプラスチック問題は、「自然を守るため」だけではなく、「自分の体を守るため」の問題でもあります。
これからの社会が、環境と共生する方向にシフトできるかどうか。その答えは、一人ひとりの小さな選択にかかっているのかもしれません。

◆まとめ

・マイクロプラスチック=5mm以下のプラスチック片
・海・大気・土壌すべてに拡散
・人間の血液・肺・胎盤からも検出
・化学物質による健康リスクが懸念
・これからの鍵は「出さない・減らす・伝える」