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唐津くんち ― 受け継がれる魂と熱気に包まれる秋の大祭

秋が深まる11月。佐賀県唐津市の町は、毎年この季節になると特別な熱気に包まれます。それが「唐津くんち」。
唐津神社の秋季例大祭として始まり、約400年もの歴史を持つこのお祭りは、今やユネスコ無形文化遺産にも登録され、全国から数十万人もの観光客を魅了しています。
「くんち」とは、九州地方で神様に感謝を捧げる祭りを指す言葉で、もともとは「供日(くにち)」が語源といわれています。長崎の「長崎くんち」や博多の「博多おくんち」と並び称される、
九州三大くんちのひとつ。中でも唐津くんちは、その豪華絢爛な曳山行列と、地域全体が一体となるエネルギーあふれる雰囲気で、観る者の心を強く揺さぶります。

唐津くんちのはじまりと歴史

唐津くんちが始まったのは江戸時代初期、17世紀のこと。唐津城を中心に栄えていたこの町で、唐津神社の秋祭りとして奉納されたのが起源といわれています。豊作や商売繁盛、航海の安全を祈り、氏子たちが力を合わせて祭りを盛り立ててきました。
このお祭りが他と違うのは、曳山の存在です。江戸時代後期から明治時代にかけて作られた14台の曳山は、それぞれの町ごとに奉納されたもの。獅子や兜、鯛、亀、鯨など、当時の職人たちが丹精込めて作り上げた漆塗りの曳山は、金箔が施され、
まるで巨大な工芸品のよう。今もなお町ごとに大切に守られ、祭りの日には街中を練り歩く姿を見せてくれます。

曳山行列 ― 唐津くんちのハイライト

唐津くんちの最大の見どころは、なんといっても「曳山行列」です。曳山は高さ7メートル、重さは最大で3トンを超えるものもあり、迫力は圧巻。地元の若者たちが「エンヤ、エンヤ!」という威勢のいい掛け声をあげながら力いっぱいに曳いていきます。
特に見どころとなるのが、石畳の道や狭い曲がり角を豪快に曳き回す場面。車輪がきしみ、掛け声が響き渡り、見物客からは大きな歓声が上がります。その瞬間、町全体が一体となり、400年もの歴史が息づいていることを肌で感じられるのです。
さらに夜になると、曳山には無数の提灯が灯されます。昼間の豪華さとはまた違い、幻想的で荘厳な雰囲気が広がり、観る人の心をしっとりと包み込みます。

唐津くんちのスケジュール

唐津くんちは、毎年 11月2日から4日までの3日間 開催されます。日ごとに雰囲気が異なるため、時間が許すならぜひすべてを体験してみたいところです。

●11月2日(宵ヤマ):夕刻から曳山が唐津神社を出発し、お旅所へ向かいます。夜の町を進む曳山に灯された提灯の明かりは、幻想的で心を奪われます。観光客が最も増えるのもこの夜。


●11月3日(御神幸):唐津神社の神輿が町を渡御し、それに合わせて14台の曳山が市内を練り歩く最高潮の日。町中が歓声に包まれ、唐津くんちの真骨頂を味わうことができます。


●11月4日(町廻り):曳山が各町を廻り、氏子の家々を訪れてお祭りを締めくくります。祭りの喧騒が徐々に収まり、余韻を感じながら秋の唐津を楽しめる日です。

体験記:唐津くんちを歩いてみた

実際に唐津くんちを訪れてみると、まず驚くのが人の多さと熱気です。唐津駅を出た瞬間から町はお祭り一色。露店の並ぶ通りには、イカ焼きや唐津バーガー、呼子のイカシュウマイなどご当地グルメがずらりと並び、食欲をそそります。
石畳の町を歩くと、曳山が近づいてくる音が聞こえてきます。太鼓や鉦の音、そして掛け声。やがて目の前に現れる曳山は想像以上の大きさで、近くにいるとその迫力に思わず息をのむほど。若者たちが汗をかきながら必死に曳く姿は、ただのお祭りではなく
「生きた伝統」であることを強く感じさせてくれます。
夜になると町の空気は一変します。昼間の熱気が少し落ち着き、提灯の明かりに照らされた曳山が静かに進んでいく光景は、どこか神秘的で、歴史絵巻の中に迷い込んだような気分に。歓声よりもため息が多くなるのも納得です。

唐津くんちを楽しむポイント

観光で訪れるなら、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

●宿泊は早めに予約を!:毎年全国から観光客が集まるため、唐津市内の宿泊施設はすぐに満室になります。早めの予約がおすすめです。
●観覧スポットを決めておく:唐津城近くの通りや駅前は人気スポット。石畳の急な曲がり角での曳山の「曳き込み」も迫力満点です。
●ご当地グルメも忘れずに!:唐津は玄界灘に面しているため、海の幸も豊富です。地酒など、祭りと一緒に地元の味を楽しめば、旅の思い出もさらに深まります。

唐津の名物グルメ

●呼子のイカ料理

唐津といえばまずは 呼子のイカ。呼子港は日本有数のイカの漁場で、透明感のある新鮮なイカの活き造りは絶品です。姿造りで出されると、まだ透き通った身が動くほど新鮮。甘みが強く、コリコリした食感は一度食べると忘れられません。
ゲソは天ぷらにしてくれるお店も多く、最後まで楽しめます。

●唐津バーガー

地元の人にも観光客にも愛されるのが、唐津バーガー。唐津城近くの虹の松原にある移動販売のワゴンが有名で、行列ができるほど人気です。炭火で焼いたパティと、甘めのソースが特徴で、どこか懐かしい味わいが魅力。虹の松原の景色と一緒に味わうと
さらに美味しさ倍増です。

●佐賀牛料理

唐津はブランド和牛「佐賀牛」の産地としても有名。地元の焼肉店やステーキハウスでは、霜降りが美しい佐賀牛を堪能できます。祭りの時期は屋台で佐賀牛コロッケや串焼きも並び、気軽に味わえるのも嬉しいポイントです。

●松原おこし

唐津の銘菓といえば 松原おこし。虹の松原にちなんで名づけられた郷土菓子で、米を炒ったおこしに黒砂糖や水あめを絡めて固めた素朴なお菓子です。サクサクと香ばしく、観光のお土産として人気があります。

●曳山最中(ひきやまもなか)

唐津くんちの曳山をモチーフにした和菓子で、可愛い見た目と上品な味が特徴です。香ばしい最中の皮にあんこがたっぷり入っており、祭りの時期だけでなく年間を通して楽しめます。

●その他、豊富な海の幸

特に有名なのが…サザエのつぼ焼き、ウニやアワビ、地魚のお刺身など。唐津の市場や居酒屋に行けば、鮮度抜群の魚介類を堪能できます。

◆唐津焼:食べ物ではありませんが、唐津名物といえば 唐津焼 も外せません。

「一楽、二萩、三唐津」と称されるほど茶人に愛された焼き物で、素朴で温かみのある風合いが魅力です。器好きの方なら、唐津焼の窯元をめぐる旅もおすすめです。

地域に息づく誇り

唐津くんちは単なる観光イベントではありません。曳山を守り、受け継いできたのは町ごとの人々であり、その誇りが祭りを支えています。子どもから大人まで、世代を超えて曳山を曳き、準備や片付けに参加する。そうした日々の営みがあってこそ、
この伝統は400年続いてきたのです。
曳山一つひとつに込められた思い、町の絆、そして「唐津の誇り」。そのすべてを感じ取れるのが、唐津くんちの最大の魅力といえるでしょう。

唐津くんちは、華やかさと迫力、そして人々の熱い心意気が一体となった秋の大祭です。
豪華絢爛な曳山が町を練り歩く様子は、一度見たら忘れられないほどの感動を与えてくれます。昼の迫力、夜の幻想的な雰囲気、そして町全体の一体感。これほど多面的に楽しめる祭りは、そう多くはありません。
もし11月に九州を訪れるなら、唐津くんちは絶対に外せない体験です。伝統が生きるこの祭りを、ぜひ五感で味わってみてください。