日本語を勉強している外国の方から、よく聞かれる質問があります。「なぜ日本語では“四”を“よん”とも読むし“し”とも読むのですか?」
「“七”は“なな”と“しち”、どっちが正しいんですか?」
確かに日本語の数え方は独特で、場合によって読み方が変わるので混乱を招きます。日本人にとっても「あれ? ここは“しち”だっけ?“なな”だっけ?」と迷う場面があります。
今日は、そんな 四と七の不思議 について、言葉の由来や習慣、文化的な背景も含めて掘り下げていきましょう。

目次
◆「四(し・よん)」の不思議
●「し」と「よん」二つの読み方
“四”には「し」と「よん」という二つの読み方があります。「し」…漢音(中国由来の読み方)、「よん」…和語(日本固有の読み方)たとえば、四角(しかく)、四季(しき)といった熟語には「し」が使われます。
一方で、四つ(よっつ)、四日(よっか)など、和語として生活の中で使うときには「よん」が使われることが多いのです。
● 「し」を避ける理由
もう一つ大きな理由があります。日本語で「し」と言えば「死」と同じ発音。これは昔から縁起が悪いとされ、日常的な数字の読み方ではなるべく避けられるようになったのです。たとえば、病院やホテルの部屋番号では「4号室」を避ける場合があります。
マンションの4階が「3A」になっていたりするのもそのためです。そのため、電話番号や車のナンバー、試験番号など、人の耳に残る場面では「よん」と読む方が一般的になりました。
◆「七(しち・なな)」の不思議
● 「しち」と「なな」の使い分け
“七”もまた、「しち」と「なな」という二つの読み方があります。「しち」…漢音、「なな」…和語、「七夕(たなばた/しちせき)」「七福神(しちふくじん)」など熟語では「しち」が多いです。
一方、普段の数え方では「なな」の方が耳馴染みがあり、特に会話では「なな」が優勢です。
●「しち」と「いち」の混同
「しち」が避けられる一番の理由は 「いち(一)」と音が似ていて聞き取りにくい からです。電話番号や暗証番号で「いち」と「しち」を聞き間違えると大問題になりますよね。そのため、数字を一つ一つはっきり言うときには「なな」が圧倒的に多くなりました。
●文化的には「しち」が正統?
実は、昔の文献や古典、または伝統的な表現では「しち」が正式とされてきました。「七五三(しちごさん)」「七草粥(ななくさがゆ/しちくさがゆ)」のように、両方の読みが残っています。
しかし現代日本語では、実用性の面から「なな」の方が強く使われる傾向にあるのです。
◆数え方と場面での違い
●時 刻:4時 → よじ(「しじ」とは言わない)、7時 → しちじ(ただし聞き取りにくいので「ななじ」と言う人も増えている)
●日 付:4日 → よっか(「しにち」とは言わない)、7日 → なのか(和語の古い読みが残っている)
●数字を一つずつ言う場合(電話番号・暗証番号など):4 → よん、7 → なな( 聞き間違いを防ぐためにこの読み方が定着)
●熟語・語彙としての数字:漢字文化圏から入った熟語では「し」「しち」が使われます。たとえば、四則演算(しそくえんざん)、四面楚歌(しめんそか)や、七不思議(しちふしぎ)、七転八起(しちてんはっき)など、このように、熟語では「漢音」が優勢。
つまり 実用では和語、文化・学術では漢語 という住み分けがされています。
●九九(掛け算の暗唱)
九九を覚えるときだけは、なぜか「し」「しち」が強く残っています。4×4=16 → ししじゅうろく、7×8=56 → しちはごじゅうろく…など、ここで「よんよんじゅうろく」「ななはちごじゅうろく」と言うことはありません。
*九九に「し」「しち」が残った理由
九九は中国から伝わったときの漢音のリズムがそのまま使われているため。「よんよん」「なななな」だと音が重なって語呂が悪く、暗唱のリズム重視で「し」「しち」が残った。つまり九九は、日本語の数の読み分けの中でも特に「音の響きとリズム」が優先される例外的な領域なのです。
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まとめると、
・実用(会話・電話番号) → 「よん」「なな」
・熟語・伝統 → 「し」「しち」
・九九 → 「し」「しち」
と分けて考えるとスッキリします。
◆なぜ「し」と「しち」ではなく「よん」「なな」が生き残ったのか?
●音の紛らわしさ:「し」=「死」、「しち」=「いち」など、これだけで十分、避けられる理由になります。
日本語は発音のバリエーションが少なく、母音が「あ・い・う・え・お」の5種類しかないため、どうしても似た音が増えがち。その中で誤解を減らすため、より明確に違う響きを持つ「よん」「なな」が重宝されたのです。
●縁起と文化:特に「四」は「死」に直結するので避けられる文化が強まりました。
逆に「七」はラッキーセブンとして縁起の良い数字でもあり、「なな」という響きの柔らかさもあって、日常生活では「なな」が自然と優勢になったと考えられます。
● 現代社会の影響:電話番号、暗証番号、商品番号など、数字を一つ一つ伝える場面が現代社会では圧倒的に増えました。聞き間違いを防ぐ必要性が高まり、「よん」「なな」の出番がますます増えたのです。
◆四と七の面白いエピソード
・お寺の「七不思議」は「しちふしぎ」と読みますが、日常会話では「ななふしぎ」と言う人も増えています。
・カルタやわらべ歌には「なのか」「なぬか」という古い読みが残っており、伝統文化と日常会話の間に揺れ動く歴史が見えます。
・「四天王(してんのう)」を「よんてんのう」とは絶対に言いません。これは熟語の力で「漢音」が守られている例。
◆まとめ:四と七の二面性
「四」と「七」は、日本語における数の多様な読み方を象徴する数字です。
・熟語や学術語では「し」「しち」
・日常生活や実用場面では「よん」「なな」
という 場面による住み分け が、長い歴史の中で自然と作られてきました。また、「死」を避けたい心理や「いち」との紛らわしさなど、音と文化が複雑に絡み合っているのも興味深いところです。
数字ひとつ取っても、言葉の使い分けにはこんなに深い背景があります。普段なにげなく「よん」「なな」と口にしている私たちも、改めてその歴史や文化を知ると、日本語の奥ゆかしさを感じますね。