年末に準備をするものといえば『年賀状』ですね。きっと元旦の日はどんな年賀状が届いているのか楽しみにしながらポストをあけることでしょう。
そんな年末年始の楽しみ『年賀状』っていつから始まったんでしょうか。また最近の傾向や来年の干支「丙午(ひのえうま)」について深堀りしてみたいと思います。

目次
◆ 年賀状の起源とは?
年賀状の歴史をひも解くと、そのルーツはなんと平安時代にまで遡ります。当時は「年始の挨拶」は直接訪問して行うのが一般的でした。しかし、距離が遠くてすぐには会いに行けない相手には、書状を使って新年の挨拶を伝えました。
これが、のちに「年賀状」として広がる最初の形だと言われています。江戸時代に入ると飛脚制度が発達し、書状文化がより一般的になっていきました。商人や武士たちは取引先や知人に「今年もよろしくお願いします」と丁寧に書き送ったそうです。
特に江戸の町人文化の広がりとともに、新年に「つながり」を重んじる風習が浸透していきました。そして大きな転機は明治時代の郵便制度の整備です。1873年(明治6年)、日本で「郵便はがき」が導入されました。このとき、手軽に送れるはがきが爆発的に普及し、年賀状文化は国民的な習慣として定着しました。さらに郵便局が「年賀郵便」として専用の仕組みを整えたことで、年末年始の風物詩となったのです。
◆ 年賀状にまつわるおもしろネタ
年賀状には長い歴史と文化があり、その中で「えっ、そんなことが?」と思うような小ネタもたくさん存在します。
- 郵便局員は大忙し!ピークは40億枚以上
年賀状の発行枚数は昭和から平成初期にかけて右肩上がりでした。ピークの2003年にはなんと44億6000万枚が発行されたと言われています。
当時の郵便局員は年末年始、寝る間も惜しんで仕分け作業にあたったとか。 - 年賀状の隠し文字やしかけ
一部の企業やデザイナーは、ユーモアあふれる「隠しネタ入り年賀状」を作ることがあります。たとえば、文字の一部を回転させると干支の動物が浮かび上がる仕組みや、特殊印刷で光を当てるとメッセージが浮かぶもの。
最近ではQRコードを印刷して動画メッセージにつなげるなど、アナログとデジタルの融合も見られます。 - 当選番号付き年賀はがき
お年玉付き年賀はがきは、1949年(昭和24年)から始まりました。戦後復興期の人々に少しでも夢と楽しみを、という思いから導入された制度です。1等賞品はテレビや電化製品など、その時代を映す品物が並び、いまでも1月の「お年玉くじ抽選会」はちょっとしたワクワクを与えてくれます。 - 芸能人や偉人のユニーク年賀状
昔の偉人や有名人の年賀状もユニークなものが多かったとか。夏目漱石はシンプルで硬派な文章派、太宰治はユーモアを交えた洒落っ気のある挨拶を好んだといわれています。現代では芸能人がSNSで公開するデジタル年賀状も人気ですね。
◆ 現在の年賀状の傾向
時代の流れとともに、年賀状の送り方や受け止め方も大きく変わってきました。
- 減少傾向とデジタル化
総務省の調査によると、年賀状の発行枚数は年々減少傾向にあります。2025年現在ではピークの半分以下となり、LINEやメール、SNSの「デジタル年賀」が急速に広がりました。特に若い世代は、気軽に画像やスタンプで新年の挨拶を済ませる傾向が強まっています。 - ビジネス利用の工夫
一方で企業や店舗は「販促ツール」として年賀状を活用する動きがあります。お得なクーポンや限定セール情報を盛り込むことで、単なる挨拶状以上の役割を果たしています。最近では、SDGsを意識して「環境配慮型の年賀状」や「紙を使わないデジタル年賀キャンペーン」も登場しています。 - パーソナライズ需要の高まり
写真入り年賀状や、家族・子どもの成長報告を兼ねたオリジナルデザインが人気です。特にオンライン印刷サービスの進化で、スマホから簡単にデザインを選んで発注できるようになりました。AIを使った「自動デザイン生成」など、テクノロジーが年賀状を新しい形に進化させています。
◆ 喪中はがきについて
年賀状文化と切っても切り離せないのが「喪中はがき」です。身近な家族が亡くなった場合、新年の祝賀を控えることを知らせるために送られます。
●喪中はがきの基本:一般的には、二親等以内の親族(両親、配偶者、子ども、兄弟姉妹、祖父母など)が亡くなったときに出されます。送る時期は11月から12月初旬が目安で、相手が年賀状を準備する前に届くようにするのがマナーとされています。
文面はシンプルで、「今年〇月に〇〇が永眠いたしましたため、年頭のご挨拶を差し控えさせていただきます」といった内容が一般的です。華美な装飾は避け、落ち着いた書体やモノトーンのデザインが選ばれます。
●喪中はがきの現代的な傾向:最近では、伝統的な白黒だけでなく、落ち着いたカラーを取り入れたデザインや、花や風景をモチーフにした優しいイラスト入りの喪中はがきも増えています。また、オンラインで簡単に作成・注文できるサービスもあり、忙しい現代人に対応した形が主流となりつつあります。
●喪中時の代替挨拶「寒中見舞い」:喪中はがきを出した場合でも、新年が明けてから挨拶を返す手段として「寒中見舞い」があります。これは松の内(1月7日)を過ぎてから立春(2月4日頃)までに送るもので、近況報告や相手への気遣いを伝える丁寧な方法です。
特に近年は「寒中見舞いはがき」も多彩なデザインが用意されており、相手とのご縁を大切にする手段として見直されています。
◆ 2026年の干支「丙午(ひのえうま)」の意味・象徴性・風習など
まずは、干支(えと)とは何かをおさらいしておきましょう。
① 十二支と十干の組み合わせ
一般的に「えと」と聞いて思い浮かべるのは、ね・うし・とら…といった12の動物です。これは「十二支(じゅうにし)」と呼ばれます。 しかし、干支という語には本来「十干(じっかん)」と「十二支」を組み合わせた暦法(十干十二支暦)が含まれています。
十干は「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類で、これに「陽/陰」の性を持たせ、五行説(木・火・土・金・水)とも結びつけられています。 また、十干と十二支を組み合わせると一見10×12=120通りになるように思えますが、実際には60通りが周期(60年で一巡)となるように設計されています。これを「六十干支(ろくじっかんし)」と呼びます。 たとえば、ある年が「甲子(きのえ ねずみ)」なら、次の甲子は60年後に巡ってきます。
② 起源と歴史
干支の起源は古代中国にあります。特に、紀元前の甲骨文字(殷/商時代)には十干十二支の概念をうかがわせる記録が残されており、年月・日付・方角・時刻などを表すための体系として使われていました。 その後、春秋戦国時代あたりには、暦や方位・天文観測などに応用されるようになり、日本には奈良~飛鳥時代に伝わったとされます。日本国内での証拠としては、埼玉・稲荷山古墳から出土した鉄剣に「辛亥年」という干支の刻印がある例があります。 さらに、十二支に動物をあてはめて親しみやすくする風習は後世になってからつくられた面があります。動物の選定や意味づけには諸説ありますが、後漢時代にはすでに干支に動物を対応させた記録があるとも言われています。 また、日本では古くから干支は年だけでなく、月干支・日干支・時干支などとしても用いられ、陰陽五行説・易学・占い・暦(こよみ)の体系と結びついてきました。 そうした歴史を背景に、日本では「年賀状」「干支飾り」「年の守りもの」など、干支をモチーフとする文化が定着してきました。
③ 2026年の干支「丙午(ひのえうま)」の意味・象徴性・風習
●丙午(ひのえ うま)とは?
2026年(令和8年)は、十干が 丙(ひのえ)、十二支が 午(うま) と結びついた「丙午(ひのえうま)」の年となります。
十二支の「午(うま)」という動物は、馬を象ったもので、古来より人間生活と深い関わりを持ってきました。十干の「丙(ひのえ)」は五行でいう「火」に属し、陽性を持つ性質とされ、「明るさ」「エネルギー」「情熱」などを象徴します。
したがって、丙午年は「火の馬」というイメージが重なり、躍動的・活動的・情熱といった象徴性が語られることがあります。
●丙午の年齢早見と周期
「午年(うま年)」の人は、12年ごとに巡ってきます。2026年の午年生まれの年齢早見表の例を見ると、たとえば:2026年生まれ(0歳)・2014年(12歳)・2002年(24歳)・1990年(36歳)・1978年(48歳)・1966年(60歳)・1954年(72歳)… などが該当します。
また、特に「丙午年生まれ」といえば、直前の同じ干支は 1966年(昭和41年) であり、60年周期で再び巡ってきます。 因みに、干支が60年で一巡することにちなみ、「還暦」は自分が生まれた年の干支に戻ることを祝う意味があります。つまり、2026年に60歳になる方(1966年生まれ)は、自分の干支が再度回ってきたという意味が込められます。
●丙午にまつわる言い伝え・迷信
干支には言い伝えや俗説が多くつきものですが「丙午年」には特にいくつか有名なものがあります。
・丙午の“女性”は気性が激しい?:古くから言われることに、「丙午年に生まれた女性は気性が強く、夫が苦労する」といった迷信があります。これを避けて、丙午の年に子どもを作ることを控えた例もあるそうです。
「八百屋のお七と丙午」特に有名な説話に「八百屋のお七」という江戸時代の物語があります。お七は恋人に会うために火事を起こして罪を問われた女性ですが、このお七が丙午(ひのえうま)年に生まれたとされており、これが丙午年に災難が起こる・女性が激しいといった
語られ方を後世に広めたという説があります。
・出生率の変動:1966年の丙午の年には出生率が控えめだったという報告があるようです。これは当時「丙午の年に女の子を産むと夫が苦労する」という迷信を信じ、子どもをつくるのを控える風潮があったためだ、という説もあります。
迷信や風潮が子どもを作るタイミングに影響したことも一因とされます。 ただし、こうした言い伝え・迷信は時代や地域・信仰によって異なるもので、現代ではあまり重視されない傾向も強いでしょう。ただ話題性・ネタとしては面白い素材になります。
●丙午年に期待される象徴的テーマ
干支をモチーフにしたデザインや年賀状のテーマには、以下のようなキーワードが挙げられそうです:
・躍動、前進、躍馬(いかに力強く走るか)
・エネルギー、開拓、情熱
・明るさ・火の象徴性
・変化・革新
こうしたテーマを押さえておけば、2026年年賀状のデザインやキャッチコピーを考えるときにも使いやすいでしょう。
④ 年賀状との結びつき:2026年の年賀状アイディア・傾向
2026年の干支「丙午(火の馬)」を活かして、年賀状をより印象深くするアイディアや傾向を考えてみます。
[デザイン・モチーフのアイディア]
●馬(馬体・蹄・たてがみ)の描写:躍動感ある馬のシルエット、駆ける馬、流線的な線画など。蹄の跡やホースシュー(馬蹄)をモチーフとしたアクセントも面白い。
●火・炎・光のモチーフ:十干「丙(火)」の象徴として、炎・光・放射線・太陽モチーフを背景や装飾に使う。赤・橙・金色など、暖色系を基調にする。
●和モダン × 干支アレンジ:墨絵風馬、金箔を使ったアクセント、和紙テクスチャ+モダンフォントの組み合わせ。
●動き・動線表現:馬の走る軌跡を曲線で表す、飛び跳ねるようなレイアウト、視線誘導を意識したデザイン。
●漢字や語句との融合:たとえば「駆(かけ)る」「翔(かける/とぶ)」「躍(やく)」など馬にちなんだ字を大胆に入れる。
[メッセージ・コピー例]
●「火の馬に乗って、新しい時代へ一気奔走」「躍動の一年をともに」「情熱の年、駆け抜けよう」「駿馬のごとく、力強く前進を」「明るき火の馬に導かれて」など
こうしたキャッチコピーは、干支や十干の意味を意識すると説得力が出ます。
[年賀状種類・形式のトレンドとの融合]
上で触れた現代の年賀状傾向(デジタル年賀、パーソナライズ、クーポン付き年賀など)と掛け合わせると、以下のような展開ができます。
●AR/AR年賀(※):馬のイラストにARマーカーを重ねて、スマホで動く馬が現れる仕掛け。
●QRコードで動画メッセージ:馬が走り出すアニメーション動画や、干支にちなんだ挨拶動画へのリンクを設置。
●SNS連動で「走馬灯」風投稿:年賀状と同じデザインをSNSアイコンやヘッダーに展開。
[環境配慮型素材使用]
●和紙・再生紙・植物インクを使いながら、馬を象ったシンプルで洗練されたデザイン。
[キャンペーン付き年賀]
●「火の馬キャンペーン」「躍動年応援クーポン」などを年賀状に仕込む。
こうした工夫をすれば、単なる干支絵の年賀状を超えて、受け手に印象を残すものになります。
◆ 「年賀状じまい」
毎年のご挨拶は大切だけれど、ライフスタイルや時代の流れもあり、「今年で最後にしようかな…」と思う方も増え「年賀状じまい」という言葉も広がってきております。やめる時には角が立たない言い方を選ぶのがポイントです。
そんなときに役立つ、角の立たない文例をご紹介します。
●シンプルにやめたいとき
誠に勝手ながら、年賀状での新年のご挨拶は本年をもちまして失礼させていただきます。今後とも変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。
●高齢を理由に
高齢となり筆を執ることも難しくなってまいりましたので、年賀状でのご挨拶は今年限りとさせていただきます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
●デジタル移行を理由に
このたび年賀状でのご挨拶を控えさせていただくことにいたしました。以後はメールなどでご連絡を差し上げますので、変わらぬお付き合いをいただければ幸いです。
●感謝を込めて
長年にわたり年賀状でご挨拶をいただき、誠にありがとうございました。勝手ながら本年をもちまして年賀状でのご挨拶は終了させていただきますが、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
●仲の良い友人向け(カジュアル)
毎年ありがとう! 来年からは年賀状をやめることにしました。これからはLINEやメールでやり取りしようね♪
など、年賀状をやめるときは「理由をひとこと」「感謝の気持ち」「これからもよろしく」の3つが揃っていると安心です。特にビジネスや目上の方には丁寧に、友人にはカジュアルに書き分けると自然ですね。
◆ まとめ
年賀状は単なる挨拶状ではなく、人と人との「縁」を結び直す日本独自の文化です。平安時代の書状から始まり、明治の郵便制度を経て、昭和・平成にかけて国民的行事となり、令和の今はデジタル化と融合しながら新しい形に進化しています。
おもしろネタやお年玉付きくじ、そして喪中はがきや寒中見舞いといったフォーマルな側面まで含めると、年賀状は「日本人の生活と心を映す鏡」といえるでしょう。たとえ年賀状を出す人が減ってきても、「年のはじまりに、相手を思って言葉を贈る」という習慣は、これからも形を変えながら受け継がれていくに違いありません。
※「AR年賀状」とは?
年賀状に印刷された QRコードや専用マーカー、デザイン要素 をスマホで読み取ると、動画メッセージが流れたり、3Dキャラクターが飛び出したり、アニメーションが動いたりする仕組み。写真だけでは伝えきれない「声」や「動き」で、よりパーソナルな年賀状になります。
例えば、子どもや家族の動画メッセージを流す/ペットがしゃべっているようなARアニメ/おみくじや干支キャラクターが飛び出す仕掛け/企業用だと、会社PR動画や社長の挨拶を再生する など
反面、通常の印刷料金やはがき代とは 別に、AR機能の利用料・設定費用 がかかります。(別途AR料金)