
こんにちは!今日は長崎を代表する秋の大祭「長崎くんち」についてじっくりご紹介します。長崎に暮らす人々にとっては秋の風物詩であり、全国から観光客が集まる一大イベント。
私自身も「おくんち」の熱気に魅了された一人で、毎年のように訪れています。この記事では、長崎くんちの歴史や由来、豪華絢爛な奉納踊り、そして楽しみ方やグルメまで、じっくりとお伝えします。
長崎くんちとは?
「長崎くんち(ながさきくんち)」は、長崎市の「諏訪神社の秋季大祭」で、毎年 10月7日から9日 の3日間開催されます。地元では「おくんち」と呼ばれており、まち全体が盛り上がるビッグイベントです。
最大の見どころは「奉納踊り」。長崎市内の各町(踊町)が順番に出し物を担当し、7年に一度の舞台に向けて数年をかけて準備をします。演目は龍や鯨、船、傘鉾など、迫力と華やかさを兼ね備えたものばかり。しかも同じ演目でも毎回少しずつ進化や工夫が
加えられるので、何度見ても飽きないのが魅力です。
長崎くんちの歴史
長崎くんちの起源は、江戸時代初期の 寛永11年(1634年)。町人の二人が諏訪神社に踊りを奉納したのが始まりとされています。当時の長崎は鎖国下にありながらも、オランダや中国との貿易が許された唯一の国際港。さまざまな文化が行き交う独特の町だったのです。
そのため、長崎くんちの奉納踊りには中国の龍踊や西洋の船を模した山車など、国際色豊かな出し物が数多く登場します。「和」「華」「蘭」が交じり合った長崎らしい文化の縮図といえるでしょう。
また、長崎くんちは単なる祭礼ではなく、当時の町の経済活動や市民の結束を支える役割も果たしてきました。奉納踊りを披露するには多額の費用や人手が必要で、町の人々が一丸となって準備を進めます。その過程が町の絆を深め、長崎の活力となっていったのです。
現在では、国の重要無形民俗文化財にも指定され、長崎の誇る文化遺産として全国に知られています。
奉納踊りと豪華な出し物
長崎くんちの代名詞ともいえるのが「奉納踊り」です。諏訪神社をはじめ、「お旅所」「中央公園」「八坂神社」などの会場で披露されます。
[代表的な演目]
- 龍踊(じゃおどり):中国文化の影響を強く受けた演目で、長さ20メートルを超える龍が登場します。龍を操るのは数十人の若者たち。龍が大きくうねり、地を這い、天に昇る姿は迫力満点。観客から歓声があがる瞬間です。
- 鯨の潮吹き:長崎の町に伝わるユニークな出し物。大きな鯨の山車を人々が操り、口から本物の水を吹き上げる演出は子どもたちにも大人気。
- 御座船(ござぶね):船を模した豪華な山車で、波をかき分けるように街を進みます。海に開かれた長崎の歴史を象徴する出し物です。
- 唐人船(とうじんぶね):中国との交流を思わせる船型の出し物で、エキゾチックな雰囲気が漂います。
- 傘鉾(かさぼこ):巨大な傘のような飾り物で、踊町のシンボル的存在。先頭を華やかに飾り立てます。
- 踊町は全部で59町あり「7年に一度の出番」を心待ちにしています。そのため、自分の町が出る年には住民総出で盛り上がり、町の誇りがかかっているのです。
2025年:踊町とその出し物の見どころを掘り下げてご紹介
以下は、2025年(令和7年)の長崎くんちで登場する6町の出し物です。7年に一度の当番回りで、今年は以下の町が担当します。
- 西古川町:傘鉾・櫓太鼓・本踊
相撲と縁が深かった歴史を背景に、力強い「櫓太鼓」、女性による優雅な「本踊」が見どころ。行司による口上や相撲甚句、土俵入りの弓取り式も含まれ、伝統と地域の誇りを感じさせる構成です。 - 新大工町:傘鉾・詩舞・曳壇尻
大工職人町として発展した歴史を反映し、漆塗り・檜造りの山車「曳壇尻」を曳き回す勇壮な演技が印象的。詩舞との対比が美しく、男性的な力強さと女性的な優雅さが共演します。 - 諏訪町:傘鉾・龍踊(青龍・白龍)
長崎くんちを象徴する龍踊が、青龍・白龍の2体に加え、子龍・孫龍と豪華編成で登場。役割交代を一瞬で行う「棒交代」の演出は圧巻で、宝塚のような華やかさが光ります。 - 榎津町:傘鉾・川船
港町・長崎の歴史を感じさせる川船。和洋折衷の装飾が施され、船上で舞う踊り手や囃子の演奏が優美に響きます。龍や鳳凰の装飾なども見どころ。 - 賑町:傘鉾・大漁万祝恵美須船
恵比寿様を乗せた「恵美須船」や子船など船団を組み、大漁旗や本物の真鯛(!)を使った演出が豪快。商売繁盛や海の恵みを祝う祝祭感あふれる演目です。 - 新橋町:傘鉾・本踊 阿蘭陀万歳
江戸時代のオランダ文化交流を感じさせる、西洋風衣装とユーモラスなダンスが印象的。異国情緒たっぷりで、笑顔と「万歳」の掛け声あふれる弾けるような演目です。
町を練り歩く楽しさ
奉納踊りは神社や会場で披露されるだけではありません。踊町は山車や演者とともに町中を練り歩きます。これを「庭先回り」と呼び、商店や企業、個人宅を回って踊りを披露します。
路地裏から突然龍が飛び出してきたり、曲がり角から大きな船が現れたりすることもあり、街全体が舞台そのもの。観客は意図せず「ばったり出会う」楽しさを味わえます。
この「偶然の出会い」こそが、長崎くんちをよりワクワクさせる大きな魅力です。
くんち料理と祭りのグルメ
お祭りといえばグルメ。長崎くんちの時期は街中が食の香りで包まれます。
[屋台で味わえる名物]
- ちゃんぽん:長崎を代表する麺料理。具材たっぷりでボリューム満点。
- 皿うどん:パリパリ麺にあんをかけるタイプや、太麺を炒めたものなどバリエーション豊富。
- 角煮まんじゅう:とろとろの豚角煮をふんわり生地で包んだ長崎名物。
- よりより(麻花兒):中国由来のお菓子で、カリッとした食感がクセになります。
[おくんち料理]
さらに特筆すべきは「おくんち料理」です。これは、長崎の家庭や企業がお祭り期間中に親戚や知人を招き、豪華な料理でもてなす習慣。刺身や寿司、煮物、揚げ物など大皿に盛られた料理が並び、食卓はまるで宴会さながら。まさに「おくんち」は食文化の祭典でもあります。
長崎くんちを楽しむコツ
- 観覧席を確保する:諏訪神社やお旅所の有料観覧席は大人気。数か月前から販売され、すぐ売り切れるので早めの予約が必須です。
- 町歩きを楽しむ:庭先回りを探して歩けば、街角で迫力ある出し物に出会えるチャンス。偶然の出会いを楽しみましょう。
- カメラは必携:龍踊や鯨の潮吹きなど、写真映えする場面が盛りだくさん。夜のライトアップも幻想的です。
- 地元の人に混じって楽しむ:おくんちは観光客だけでなく、地元の人々が心から楽しんでいる祭り。商店街や民家の軒先にも飾り付けがされ、町全体が祝祭空間になります。
長会場全体が一体となって盛り上がる「掛け声」
◆掛け声の種類と意味
- 「もってこーい!」:長崎くんちを代表する掛け声。意味は「もう一度やってくれ!」「アンコール!」。演目が終わると観客が一斉に「もってこーい!」と声をかけ、演者たちは同じ演目を再演します。
アンコール文化があるのは長崎くんちならではで、観客も祭りの一部として参加できる特別な瞬間です。 - 「しょもーやれー!」:「もっとやれ!」「続けろ!」というニュアンス。太鼓や龍踊など、迫力ある場面で観客が自然に声をそろえ、勢いを後押しします。「しょもーやれー!」がかかると、担ぎ手や踊り手のテンションも一気に上がり、演出がさらに熱くなります。
- その他:「よいやー!」や「はいっ!」といったリズムに合わせた声もあり、踊町ごとに少しずつ特徴があります。観客と演者の間で掛け合いのように響くのも、長崎くんちの独自性。
◆掛け声がもたらす雰囲気
掛け声があることで、観客は「見るだけの存在」ではなく「参加者」になれる。奉納踊りは神事としての厳かな面がありますが、掛け声が加わることで、庶民的で熱狂的な祭りの側面が前面に出ます。
特に龍踊や鯨の潮吹きなどは、観客の声援に応える形でパワーが増し、演者たちの動きにも気合がこもるのです。
◆掛け声のタイミング
出し物が終わり、演者たちが退場しようとする瞬間に「もってこーい!」。太鼓の力強いリズムや龍が大きく動く場面では「しょもーやれー!」。観客が一斉に声を合わせるため、場の空気が一気に盛り上がります。
◆初めての観光客でも参加できる?
もちろんできます!「もってこーい!」や「しょもーやれー!」は観光客が声を出しても全然OK。むしろ一緒に声を出すことで、お祭りをより深く体感できます。地元の人に混じって掛け声をあげると、長崎くんちの一体感を肌で感じられるはずです。
まとめ
長崎くんちは、ただの秋祭りではなく、長崎の歴史・文化・国際交流の縮図ともいえる行事です。江戸時代から続く伝統を守りつつも、新しい工夫や演出を取り入れ、時代に合わせて進化を続けています。
町全体が舞台となり、豪華な奉納踊りと、街角での偶然の出会い、そして食の楽しみまで味わえる「おくんち」。長崎を訪れるなら、この3日間は絶対に外せません。
一度体験すると、その熱気と感動は忘れられず、きっと「また来年も」と思わせてくれるはず。あなたもお気に入りの踊町と出し物を見つけて、ぜひ「推し町」を追いかけてみるのも楽しむ一つとして、長崎の秋を彩る最高の祭り「長崎くんち」を一度見に行かれてください。